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MEDIA DAY:SESSION5,6レポート #MDT2018

CINRA主催のメディアカンファレンス『MEDIA DAY』の「New Business」と「Empowerment」を聞いたレポートです。

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mediadaytokyo.jp
 

【SESSION5】 New Business

スピーカー
 大熊 信(cakes編集長)
 西尾 崇彦(株式会社晋遊舎 代表取締役社)
 青木 耕平(株式会社クラシコ代表取締役
モデレーター
 モリ ジュンヤ(CINRA,Inc.代表取締役

■cakesについて

https://cakes.mu

月間250万UUのデジタルコンテンツ配信プラットフォーム。編集者4名、エンジニア2名。
500円/月のサブスクリプションモデルで、過去記事含め2万記事を読むことができる。
「嫌われる勇気」「やれたかも委員会」などcakes発のヒットコンテンツもでてきている。
会員数万人×500円の売上と、クライアントワーク、otherで収益化。

クリエイターへの還元は「よく読まれた」記事ほど高いが、PVがとれていなくても、有料会員獲得につながるクリエイターもいるので、ヒットだけは追いかけない。

出版業界とのつながりの強さが、ビジネスモデルをささえている。
今は出版不況で、出版社が広告費をだせない。そこで、cakesで発信して、本を売るビジネスを出版社と行っている。cakesは親会社がないのでしがらみがなく、出版社にコンテンツを提供してもらえている。また、(ファッションやライフスタイルといった)メディアのジャンルをつくらなかったところが強みにつながっている。

テキストのサブスクリプションは収益化が難しく、参入障壁がかなり高い。
cakesはサブスクを始めたタイミングがよく先行者になれ、黒字化までの期間を長めに待ってもらえたので続けられた。
現在は、noteで発掘して、cakesで収益化する構造ができている。
映画化など、大きな企画を今後はやっていきたい。

晋遊舎について

http://the360.life/

「MONOQLO」「LDK」などテスト誌(商品テストのレビュー)を発行。社内に専用のテストラボを建設中、大学の研究室とも組んで誌面をつくっている。
消費行動に対して、あらゆるジャンルの雑誌をだしている。編集者60名ぐらいで、定期購読者は少なく、主戦場はコンビニ。dマガジン、Smartnewsでもランキングの常連。今年、デジタルの売上が雑誌を上回った。

検索してもなかなかでてこない、実際にさわった情報をのせているのが強み。商品は半分以上買っている。
今は物を買うのに、ネットで調べるは常識。意外とリアル店舗に行っても商品についてきける人がいない。シンプルに情報が分かる場所を提供している。
無印など出せば必ずヒットする記事はあるが、それだけに頼りすぎず、担当者が本当に出したいコンテンツかどうかを重視している。

一般的にテスト誌は運営しているうちに、社会派な内容になってしまう傾向があるが、アジア全般的に、社会派な内容よりエンタメのほうがうけるため、バランスに気をつけている。

クラシコムについて

https://hokuohkurashi.com/

雑貨のECサイト「北欧暮らしの道具店」を運営。
ECは広告で新規ユーザーを獲得するパターンが多いが、「北欧暮らしの道具店」は広告への投資を減らし、メディアを育てている。メディアにくるユーザーの方が多く、ECコンバージョンは低いが、母数UUが大きいのでのびている。小売の他に、メディアへ広告がはいっている。物販とセットで広告できるのが強み。
22億の売上。物販にメディアを取り入れることで、ゲーム並みの収益構造がつくれている。PVあたりの換金効率が良い。

メディアは客観・公平性が求められるが、「北欧暮らしの道具店」は、基本的にはお店という立て付けのため、主観を編集できる。(店長のおすすめ視点ですべて編集できる)
できるだけ狭い価値観で深く刺さるといった、インターネット上でのビジネスを成功させている。「みんなのためのもの」ではなく、「自分たちへのもの」が、商業パブリッシャーではなかなかできないので、それができているのが強み。

この世界観のコンテンツ制作は、ほぼ9割を社内で作成している。外部に出すときもスタイルを作るところは社内で徹底してやっている。
編集経験者に主観で書いてもらうほうが(やり方が普通の編集と違うため)コストがかかるので、編集経験のないセンスのある人達を採用し、社内で教育している。
未経験者の適正判断は、ほとんどは採用で解決、20%を教育で解決。年間で1000人応募→15人採用、採用も自社サイトからの応募なのでほとんどが元読者からの応募、世界観に共感してくれている。
採用テストは、40分間でスタイリングして写真をとってもらうもの。頭の中にビジョンがあるかどうか、それが「北欧暮らしの道具店」のスタイルとあっているかをみる。技術はあとで教育できる。採用後は、半年メンターをつけてひたすら教育だけをする。しっかり時間を掛ける。
道具も一流のものをあたえる。それが問題解決として一番早い。

PVなど計測はしているが、コミットはしていない。
みんなが読みたいではなく、自分が読みたいものを書け、の方針でやっている。
数字だけではない、振り返りのミーティングを定性的にやっている。

今後は、小売とメディアの上のレイヤーとして、興行ビジネスをやっていきたい。オリジナルドラマ制作にチャレンジ中。初回は70万再生を達成。
本や音楽のジャンルはニッチとマスが協業しているが、映像は配給なのでニッチがない。映画をつくり、このスタイルの映画ならうちといわれるような、レーベルをつくっていきたい。

【SESSION6】 Empowerment

スピーカー
 植原 正太郎(greenz.jp 事業統括理事)
 工藤 瑞穂(NPO法人soar代表理事・ウェブメディア「soar」)
 平山 潤(NEUT magazine(Be inspired!)編集長)
モデレーター
 浜田 敬子(BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長)

 

greenz.jpについて

https://greenz.jp/

2006年にスタートした、20万UU/月のソーシャル(社会課題解決)メディア。
日本中に、「ほしい未来は、つくる」人を増やすことをミッションに運営している。
社会に疑問をなげかける記事が、よく読者へ届いている。人物をストーリーに乗せて伝えるのが一番強いコンテンツ。

メディア運営の他に、ワークショップやトークショーといったイベントを開催。
イベントをやりたい読者と一緒に、イベントをつくって全国に広めている。今までに110箇所/日本で実施。

寄付会員は945名で年間1000万円ほど集め、300本の記事中120本が寄付金を原資にして書かれている。価値観を中心に発信しているので、そこに共感しているユーザーが集まる。
読者のgreenzへの関わり方がステップで設計されており(読む→イベントに参加する→一緒につくるといったような)自発的にユーザーが動いてくれる。

NPO法人なので、PVはビジネスと紐付いておらず追っていない、メディアとして大きくする目標はないが、巻き込む人はふやしていきたい。

■soarについて

https://soar-world.com/

困難がある人をインターネットを使ってサポートしていくウェブマガジン。
障害や病気が理由でなかなか人のつながりができない、家から出れない、そんな人とインターネットで繋がり、励ましを届けることができるネットをつくりたい。
気持ちをエンパワーメント+実際の助けになることを目指している。

読者を広げるために、一般的なメディアではターゲットを狭くしていく流れがあるなか、困難というキーワードで、障害者だけに絞らず、格差がある人、LGBT、高齢者など横断的にユーザーをとっていっている。35万UU/月 Searchからのトラフィックが多い。寄付会員は450人ほど。

気をつけているトンマナとして、困難がある人でも友達を紹介するように書いて紹介している。
メディアでありNPO法人であるので、PVなどのKPIは持っておらず、支援になれば最悪soarだと認識されなくてもよいと考えている。

■NEUTについて

http://neutmagazine.com/

社会問題を伝える上でどういうアクションがあるのか、人にフォーカスして届けるマガジン。(来月から名前を変えて活動する)10万UU/月 30-40代読者が多い。感度の高い人が読んでいる。ニュートラルな視点を日本人が持とう、ということを伝えていきたい。
リニューアル前から毎月トークイベントをおこなっている。

横に読者を広げるために、記事では難しい言葉をつかわない、離脱しないように誰でもわかる言葉で書くようにしている。ミレニアルズやサスティナブル、エシカルなどといった言葉は使わない。そういったキーワードはなるべく使わずに、原体験(ストーリー)に視点をあてる。
はじめて社会に出す意見の切り口や、ネタの発掘力がメディアにもとめられている。

若い人に響かせるためにはビジュアル(写真)が大事。
メディアのテーマは強いが、オーガニックの流入が一定以上ある。写真にこだわって、タイトルをわかりやすくすれば、みんな気になって入ってきてくれる。
ファッションやカルチャーの奥にある、社会問題へ気づきのきっかけを、ユーザーが好きそうなビジュアルでしかけて伝えている。入り口にはなるべく社会問題をつかわない。ポジティブに届け、クリエイティブに解決しているようにみせる。

今は出資してもらって運営している、これから広告をとっていく予定。マネタイズが一番の課題。


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どこのメディアもマスにウケるものだけではなく、編集者自身が読みたくてこれを出したいコンテンツを大事にしている印象だった。あたり前のことだけど、数字を追いかけるうえでマスな記事も必要だが、同時に理想的なコアファンをつくっていくコンテンツも大切で、育てていくべきだと思った。